むかしの話

昔mixiで書いてた話の再掲が中心

⑥ノンアンコウ鍋

昔のブログを加筆修正して載せます

「ノンアンコウ鍋」【2008年2月10日 記】

 

 

 

前回に続いて2006年ぐらいの話。

この頃私は茨城県水戸市に住んでいた。

 

水戸の名物といえば、

納豆や黄門様光圀公や偕楽園

全国的には有名だろうか。

 

全国的に有名、までのレベルではないが、

水戸から北部沿岸にかけては

「アンコウ鍋」も名物のひとつ。

北部沿岸では冬になるとアンコウが水揚げされるので、

郷土料理として食されている。

 


見た目はヌメヌメしていてグロテスク。

 

その見た目からは

とても美味しいとは想像しがたいが、

西のフグに対して東のアンコウとも言われるように、

通の人たちからしてみれば、

フグと肩を並べるほどの美味しさ。

ということらしい。

よって、

水戸市内にはアンコウ鍋を扱う店が点在している。

 

私も1~2回口にしたことがあるが、

小骨が多く、若干クセのあるイメージが残ったので、

それ以降は口にすることはなかった。

 

 


この年は父が還暦になった。

 

父の還暦祝いということで、

両親、

母方の祖母(以下婆ちゃん)、

母の妹(以下叔母)、

計4人が観光を兼ねて

私の住んでいる水戸に来ることになった。

 

事前に母から、

「還暦祝いだから、

 お昼は地元の名物とか、

 地元で有名な店とか予約しといて」

と言われた。

 


(とりあえず、アンコウ鍋でいいや)

 

 

安易な判断をした。

 

 

全国的に有名になってほしい

という想いも多少あった。

 

 

(父の還暦祝いだし、婆ちゃんも来るし)

 

いや、おもてなしの心だ。

 

そこからは真剣に、

色々な情報を入手して店選びをした。

結果、水戸市内で一番有名で、

しかも「元祖」的な店を選択。

予約も入れた。

 

(フフフ完璧だ)

(お前ら黙ってアンコウ鍋に舌鼓を打つがよい!)

 

 

 

当日を迎えた。

そして、私を含めた親戚一同5名で

いざ、アンコウ鍋の店へ。

 


母「へぇ~、なかなかイイ店選んだねぇ~」

他3名「うんうん。」

   「いいねぇ。」

   「高くないのかい?」

 

(いいぞ!いいぞ!早くアンコウ鍋を注文するんだ!)

 

母「アンコウ鍋はコースなの?」

店員「コースも単品もあります。」

  「単品は2人前からです。」

店員はその他アンコウ鍋やアンコウについて、

詳しい説明を始めた。

 

親戚一同店員の説明に耳を傾けている。

 

(おぉ! 食いつきがイイぞ!)

(もう、君たちはアンコウの頭上の疑似餌に騙された

 小魚のようだ!)

 

 

私は進んで食べる気はしないので、

私「うどんと釜飯のセット!」

 

 

父も以前アンコウ鍋を食べた時、

あまりお気に召さなかったらしく、

父「天麩羅定食!」

 

母「私も。」

(まあまあ、しょうがない。夫婦だね。)

 

 

婆ちゃん「うどんと天麩羅のセット!」
(まあまあ、

 婆ちゃんはもう86歳だから無理しなくてイイよ。)

 

 

そして、叔母

「あたしゃ、天丼!」

 


え゙ーーーーーーー!!!

 

 

おいっ!!!!!!!

 

 

お前ら!

 

 

アンコウ鍋喰わねぇのかよっ!

 

 

何で?何で?

 

 

俺が一生懸命リサーチしたんだぞ!!!!!

 

 

誰も喰わねぇのかよっ!

 

 










 


注文を受けた店員も不思議がる。

 


そりゃそうだろう、

寿司屋に行って寿司を食わない、

焼肉屋に行って焼肉を食わない。

それと一緒だ。

 

 

他のテーブルの客も不思議がっている。

そうだろう、そうだろう。

皆さんのテーブルには全て

アンコウ鍋が乗っているからな。

 

 

 

5人で店を出た。

1人私だけ、何か気まずい想いをしながら店を出た。

 

(フグにはまだまだ勝てないな、、、)

 

 

残念ながら、

アンコウ鍋が真の名物になるまでには

まだまだ時間が掛かりそうだ。

 

 

当時は市民として、

もう少し有名になってほしいと思った。

 

 

アンコウだけに、

早く全国的に『アンコウル』される日々が来てほしい。

と。