④少年ザリガニ漁師
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「少年ザリガニ漁師」【2007年10月12日 記】
あれは確か中学2年の時、
季節は10月~11月の頃。
クラスの友人4~5人でザリガニ捕りが流行った。
それも、数週間だけ流行った。
ザリガニ捕りというと、木の棒とかに適当な糸を垂らし、
駄菓子のイカなんかで1匹づつ釣るイメージだが、
少年漁師たちは違った。
なぜなら「漁師」だから。
我々の漁法は、
まず魚屋さんに行って魚の『アラ』をタダで貰ってくる。
原価ゼロ円だ。
そして、近くの沼みたいな所に行く。
早速タコ糸で結ばれたアラを水中に投下。
数分後にタコ糸を引き上げると、
アラにザリガニが一度に5~6匹しがみついてくる。
(フフフ、てめえら一網打尽だぜ)
もはや子供のザリガニ捕りではない。
これはまさに漁。
ザリガニ漁だ。
子供の遊びの域を超えている。
数時間も漁をしていれば簡単にバケツ2~3杯になった。
(今日も大漁だぜ)
え?
そんなにザリガニを捕まえる必要があるの?
それはごく普通の考えだ。
そう、
我々は「漁師」なので遊びの域も常識の域も超えていた。
捕獲したザリガニ達は、イキのいいうちに釣具屋に持っていく。
バケツいっぱいに詰め込まれたザリガニ達は、
バケツの中でシャカシャカと、こすれた音を立てながら、
自転車に揺られていく。
ドナドナの世界。
鋭い方はお分かりだと思うが、
このザリガニ達は釣りエサになる。
イカやタコを釣る時のエサになる。
魚で釣られたザリガニが今度はイカやタコのエサになる。
恐るべき自然界の連鎖。
ザリガニ達は1匹だいたい20円前後で買い取られる。
バケツ1杯につき大体50匹ぐらい。
よって、1杯で1,000円ぐらい。
毎回バケツ2~3杯は捕獲できるから、
1回の漁で約2~3千円の収入だ。
中学生の小遣いとしては大きい。
釣具屋という名の問屋に
何回かザリガニを卸していると、
釣具屋のおっちゃんは、我々にこう言った。
「今は20円だけど、もう少し寒くなると捕れなくなるから、その時は1匹40円で買って
やるよ」
「だから今日は1杯分だけ持って帰って家で飼って、また冬になったら持って来なよ」
と、なんとも甘い話を吹っかけてきた。
中学生なんかと商売をしたくないのか
その後の結末を知っていたのか
(たぶん両方だ)
我々漁師はその甘い誘いに乗ってしまった。
幸い自宅には使っていない大きめの水槽が屋外に放置されていた。
そこで約50匹のザリガニの飼育をすることにした。
毎日エサやりと水の交換。
大変な作業だ。
そして、
それから数日後。
何故か担任の先生に、この副業がバレた。
放課後に漁をしていた全員、
床に正座。
そして、
張り手の往復ビンタ。
(注:当時としてはビンタは当たり前)
なんでバレたのか、分からない。
ビンタの時そればかり考えていた。
さらに悲劇が待っていた。
気温が段々と冷え込むにつれて、
水槽のザリガニ達がどんどん息絶えていく。
共食いと寒さで数を減らしていく。
そして、
とうとう、全滅した。
ザリガニ全員、冬を越せなかった。
釣具屋のおっちゃんは、
ザリガニがそう簡単に冬を越せないのは知っていた。
端から40円で買い取るつもりはなかった。
そして、
学校にチクったのも、
たぶん釣り具屋のおっちゃん。
大人の社会の厳しさを知った。
そして、
ザリガニ達よ、
ゴメンナサイ。。。